「釣りがなかったら、今もこうして話せてなかったと思う」

富山きときと釣り倶楽部

高校時代のクラスメイト・テニス部仲間として出会い、釣りを通じてふたたび深く繋がった健一郎(大阪在住・富山きときと釣り倶楽部主宰)と、空汰(富山在住)。現在はそれぞれ別々の地で暮らすふたりが、Google Meet越しに語り合った。釣りの思い出、富山への想い、そして釣りが人生にもたらしてくれたものとは。

第一章|出会いと釣りの原点

── まず、ふたりの出会いから聞かせてください。高校時代ってどんな関係でしたか?

健一郎: 同じクラスになって、テニス部も一緒やったよね。空汰はなんていうか、ワイワイしてる場所にもいるし、そうじゃない比較的落ち着いた静かな人間とも絡んでいる、オールラウンダーみたいな存在やったなって思ってる。

高校時代の健一郎と空汰

高校時代の2人。(右が健一郎、中央が空汰)テニス部の仲間たちとの1枚(懐かしすぎる)

空汰: そんな意識してなかったけど(笑)。なんか自然にいろんな人と喋ってた感じかな。でも確かに、俺らは騒ぎすぎず、気持ちよくいられる関係やったよね。

── 一緒に釣りに行きはじめたのはいつごろですか?

健一郎: 高校2年ぐらいからかな。ある日ふと「釣りするんだ」ってお互い発覚したんよね。確か環水公園(富岩運河環水公園)でルアー投げてなかった?

空汰: 投げた気がする。でもちゃんとした最初は……滑川の漁港やない?3人で行ったやつ。あれが本当の最初やったと思う。

健一郎: そうそう!あそこで写真も撮ったの覚えてるわ。でも、あの漁港、今は釣り禁止になっちゃってるんだよな。

空汰: そうなの!?俺、こんな近くにいるのに全然行ってないから知らんかった。

2015年 滑川漁港からの眺め

2015年3月28日 一緒に釣行した滑川漁港(現在立ち入り禁止)からの雄大な眺め

釣行後の写真

釣行後にとった写真。エモい写真撮れた!とはしゃいでいたのをよく覚えています。

── 釣りを本格的にやろうと思ったきっかけはそれぞれ何でしたか?

空汰: やっぱり大学生になってから。高校の勉強漬けの毎日から解放されて、北海道という最高のフィールドに出て——「これは釣り本格的にやるしかない」ってなって、釣り感好会というサークルに入ったのがきっかけかな。そのサークルはすぐ辞めたんやけど、釣りの面白さには気づいて、そこからほぼひとりで気の合う仲間だけ探してのめり込んでいった感じ。

健一郎: 俺も大学で釣りサークルに入ったんやけど、なんか好きの系統が違ったんよね。みんな純粋に生物学的に「魚が好き!」っていう感じの人が多くて、「この魚、ヒレがでかいわ」みたいな(笑)。俺はどっちかといえば純粋に釣るプロセスが好きやったから、ちょっと違うなって。でも釣り自体は大学でもずっと続けてたな。

第二章|釣りが教えてくれたこと

── 釣りを通じて、仕事や人間関係など、人生において「これは生きてるな」と思う瞬間ってありますか?

空汰: 初めて会う人とのコミュニケーション能力は確実に上がった。俺の場合、全国に遠征に行くから、現地に着いた時点でなんとなくのネット情報しかない。この川で何が釣れるか、どのポイントがいいかを全部地元の人に聞かないといけないから。年配のおっちゃんとか、初めて会った人に入り込んでいく能力がついたかな。

健一郎: それは遠征勢ならではの感覚やね。地元やったら同じメンバーが固定されるから。完全リセットの状態から毎回始まるのって、ある意味人間関係のサバイバルだ(笑)。

空汰: そうそう。いかに入り込めるかで、教えてくれる情報量が全然変わるから。

── 自然の中に身を置くことで、気持ちがリセットされる感覚ってありますか?

空汰: あるね。最近行ったオマーンの遠征は完全に電波のない状況で、周りを見渡したら360度水平線の砂漠。夜になって空を見上げたら、見たことない星空で——「俺、どこに生まれてきた何者なんだろう」っていう感覚になった。朝起きたらラクダがたくさん歩いてて(笑)。

オマーンの砂漠にて

オマーンの砂漠にて。ラクダと空汰。

オマーンの砂漠で迎えた正月の日の出

オマーンの砂漠で迎えた正月の日の出。空汰お気に入りの1枚。

オマーン遠征での釣果

オマーン遠征での釣果、立派すぎます!

健一郎: いや、それめっちゃいいな(笑)。人生として面白い。

空汰: 日本でも北海道で渓流釣りに行ってる時は、2週間ぐらい山にテントを張って引きこもってたから。夜になると熊とか鹿の鳴き声が響いてきて、恐怖に怯えながら寝るんやけど……思い返したらそれが何故か病みつきなんだよね。その体験思い出すだけで喉からよだれが出るぐらいに体が反応する。

健一郎: 釣りっていうのをきっかけに、原始的な営みを肌でちゃんと味わってるんだなっていう感じがするわ。

── 釣りがなかったら、今の自分はどう違ったと思いますか?

空汰: ……難しいな。機械いじりとかレゴとか好きやったから、意外とオタッキーな工学部の男子みたいになってたんじゃないかな。飲み会とカラオケを繰り返す日々(笑)。

健一郎: なんとなく想像できる(笑)。空汰は興味関心が広いから、釣りがなくても別の方向でビシバシやってたやろうな。

第三章|富山という場所について

── 健一郎さんは富山を出て8年ほど経ちますが、空汰さんは北海道の6年を経て今は富山に戻っている。改めて、富山の見え方って変わりましたか?

空汰: 物理的な話をすると、海・山・川が近い。すぐ海に行けるし、すぐイワナがいる渓流に行けるし、その辺の水路でナマズも釣れる。いろんな魚種をすぐ近くで釣り上げることができるのって、相当な魅力やなと改めて感じた。北海道だと海まで札幌から1時間かかるし、山もそんなに急峻じゃないから。

健一郎: 富山ってコンパクトにギュッとまとまってる感じがするよね。富山湾も岸から100メートルも出たら水深がめちゃくちゃ深くなるじゃん。あれ、普通じゃないよな。

空汰: そうそう。アカムツ(ノドグロ)だって、普通は300メートル以上潜らないと釣れないイメージだけど、富山湾みたいに小さいボートで100何十メートルで釣れるって相当楽ちん。天然の生け簀は伊達じゃない。

健一郎: 俺が富山を出て改めて気づいたのは、スーパーのお刺身のレベルがそもそも違うってこと。大阪のスーパーと比べたら、富山のスーパーで売ってる刺身はクオリティが全然違うんよ。地理的にも富山湾で獲れたらすぐ市内まで持ってこれるから、鮮度が違う。

富山のスーパーのホタルイカ刺身

春先の富山のスーパーではホタルイカの刺身も買えたりする。

空汰: そういえば俺、漁師の友達から魚もらったりするからスーパーではあんまり比較できてないわ(笑)。

健一郎: ずるい(笑)。

空汰: でもそうやね、1回外に出たからこそ気づいたこともあって。北海道で鮭の習性について知識つけて帰ってきたら、近所の川に普通に鮭がいたんよ。そういう目で見たことなかったから、「富山でも鮭って遡上するんや」って発見になった。1回出た先で得たものの見方を、富山に帰ってから生かせてる感覚がある。

── 富山での生活をどのように満喫していますか?

空汰: 今なら明日、山菜取りに行って、その後釣り行こうかなと思ってる(笑)。1日で山のものと川の魚、全部ゲットできるじゃん。そんなに多様な食材を1回の行動で自分で取れる場所って、富山だけやと思う。

健一郎: それは今日の話で一番刺さったわ。その視点は俺にはなかった。

第四章|これからの釣りライフ

── 今後一番やってみたい釣りは何ですか?

空汰: 日本三大怪魚は全て釣ったんやけど、アカメだけルアーで釣れてなくて。高知まで何往復もして餌で釣ったことはあるけど、ガイドしてくれた人のおかげで「釣らせてもらった」ような感じやったから。イトウやビワコオオナマズみたいに死ぬ思いをしてルアーで釣りたい。これが今の一番の夢かな。

ビワコオオナマズと空汰

ビワコオオナマズと空汰

健一郎: 俺はもっと足元の話になっちゃうんだけど(笑)、タイラバをちゃんとやったことなくて。40センチぐらいの食べ頃の鯛を富山湾で釣って、刺身を作って富山の日本酒に合わせたい——それが一番やりたいこと。

空汰: それ今想像したら俺も魅力的に感じた。酒まで飲む姿が目に浮かぶ。

健一郎: 釣りの楽しみ方ってそれぞれだけど、「釣った魚を気の合う仲間と、釣りの話をしながら酒飲みながら食う」っていうのも楽しみ方の一つとしてあると思っていて。

自分で釣ったアカハタと富山の地酒

自分で釣ったアカハタを富山の地酒と合わせる。

空汰: 確かに。俺もこれからそういう楽しみ方をしていきたい。今まで完全1人遠征が多かったけど、そろそろその時代は終焉を迎えそうだから(笑)。人生で釣りたい魚はあと数匹まで来てるしな。

健一郎: 釣りのいいところは、楽しみ方が年を重ねるごとに変えられるところだよ。

空汰: いいこと言うね。そういうこと考えたことなかった(笑)。

健一郎: 家族ができたら、子どもへの自然教育の一環で「命をいただく」ことをちっちゃい頃から学ばせてあげるにも釣りってめちゃくちゃいいと思う。ライフステージが変わるごとに楽しみ方がたくさん出てくる。

第五章|釣りと友情

── 最後に。釣りがそれぞれの友情にもたらしてくれたものって何だと思いますか?

空汰: 本気でバカをやれる、頭のおかしい友達——「クレイジーフレンド」がたくさんできた。俺と一緒に釣りに行く奴って、やばい奴ばかりで(笑)。鮭が釣れたら海に飛び込んでエラに手を突っ込んで血だらけになりながら捕獲する奴とか、3千円のAmazonのゴムボートで北海道の大湿原の川を下りながら釣りする奴とか。

健一郎: 心配になるけど面白い(笑)。

空汰: そいつらと一緒にいると、自分の想像の範疇を超えてくる発想に出会えるんよね。クレイジーな奴らの周りにはまたクレイジーな奴が来るから、今の俺の仲間はほぼ全員クレイジー(笑)。

健一郎: 俺は、釣りを通じて日常では絶対に接点がなかったような人と仲良くなれることが多くて。釣りっていう1つの共通項から、多様なつながりが生まれる——そこが一番の魅力かなと思ってる。

空汰: 確かにね。

2023年 富山市内の野池でバスフィッシングを楽しむ健一郎と空汰

2023年、富山市内の野池でバスフィッシングを楽しむ。高校生ぶりの釣行。

健一郎: AIの時代だからこそ、釣りってもっと注目されるべきだと本気で思ってる。効率化が進んで人が暇になった時、自然に触れたくなるはずで、オフラインで人とのつながりも欲しくなるはず。そのどちらもカバーできるのが釣りという営みで——釣りがただのレジャーじゃなく、「人間らしさを取り戻すきっかけ」になる時代が来ると思ってる。

空汰: いや、本気で言ってるのがいいね。

健一郎: 本気やから(笑)。富山に住んでない俺みたいな人間でも、富山のためにできることがある——そのロールモデルになれたらいいなと思って、このメディアをやってる。

空汰: 釣りがなかったら今もこうやって話してなかったよな、確かに。

健一郎: 高校から縁があって繋がってきた僕らなんだけど、やっぱり釣りがなかったらこの場はなかったよね。だからこそ、目に見えにくい釣りの魅力——人と人を繋ぎ、豊かに生きるきっかけをくれるこの営みを、ちゃんと言葉にして発信していきたいなと思ってる。

釣りTシャツを着た空汰

釣りTシャツを着ているとのことで、バックプリントを見せてくれるお茶目な空汰


空汰さん、長い時間ありがとうございました。今度富山に帰った時は、ぜひ会話中に出てきた常願寺川の渓流に連れていってください——天然イワナの刺身、楽しみにしています。


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